先日、業界紙である「新建ハウジング」さんから、こんな記事が出ました。
HEAT20と呼ばれる、業界で最も信頼される団体が新提案を出す。
この内容には、私の師匠である野池師匠が大きく携わっている。
断熱性能が良くなり、冬の暖房エネルギーはある程度の削減が見込まれるようになった。
但し、パッシブデザインをやっている立場からすると、さらに自然エネルギーである太陽熱を利用して、
さらに省エネにして頂きたいが、今日は夏の話にしておきます。
下の図は、当社HPにも載っています。
夏の太陽は、これまで庇で遮るのが主流でした。
夏の太陽高度は、一番熱い8月の12時で70度程度ですので、これを庇で遮るには910cm位出せば、
室内に陽だまりはできないでしょう。
太陽は、物に当たると熱を発します。 ですので、陽だまりを作らない事が、夏の室内を涼しくする上では、
断熱向上以外に重要な内容になります。
ちなみに、人は室温でなく、体感温度で暑さと寒さを感じます。
体感温度は、
(壁・床・天井の表面温度の平均温度 + 室内温度)÷2
で表されます。
という事は、床の表面温度が上がれば、体感温度が上がり、室温以上に暑さを感じる事になります。
夏の事だけ考えれば、庇は長くした方が有利ですが、
冬の事を考えると、庇は短くした方が、南窓から太陽熱が入り有利になります。
冷房負荷は減らしたいですが、夏と冬の暖冷房負荷を考えると、暖房負荷の方が多いので
これを防ぐには、
「庇は長すぎず 短すぎず 夏と冬のバランスを考えて設計する」
というのが正解です。
軒の深い住宅で、パッシブデザインをうたう方がいますが、実はただの高断熱住宅だったりします・・・。
ただ、910cm程度の庇で太陽熱を遮れるのは、50%前後と考えてください。
そこで設置したいのが ルーバーやシェードです。
これは必ず、窓外につけなければなりません。
窓外につけると、それだけで85%程度太陽熱がカットできます。
さらに、庇を設けると92%程度太陽熱がカットできます。
今回のHEAT20でも、ηACは1以下にすべきとの見解があります。
この1以下にするには、庇はなくても、ルーバーやシェードを設ければ、
私の経験上というか実務上ほぼ達成できます。
なので、
「庇はないキューブ型の建物であっても ルーバーやシェードを設ければ 冷房負荷は大きく削減できる」
という事になります。
太陽高度の高い夏は良いのですが、今問題になっているのは、
春と秋の中間期です。
5月や6月、9月や10月なども、昔は涼しかったのですが、
今は30℃を超えるような日があります。
中間期は太陽高度が下がってきますので、庇だけで太陽熱を遮ろうとすると、
庇をかいくぐって、室内に陽だまりを作る事になります。
そうすると、太陽が床や壁に当り、熱となり、室内の温度が上昇します。
外気温はさほど高くないのに、表面温度が上昇し、
尚且つ、断熱性能が高い事があだとなり、暑い熱が保温され、
下手をすると、断熱性能が悪い住宅よりも、冷房負荷が増える結果となってしまいます。
おわかりいただいたでしょうか?
今後の夏と中間期対策には、付属部材と呼ばれる ルーバーやシェードを窓外に標準的に設置する事が重要なのです。
次回は 実際の夏の室温と冷房の消費エネルギーの実測についてお話をしていきます。
お楽しみに!
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