今日から当社に資料請求のあった方に毎月お送りしているDMの内容を
少しカスタマイズしながら、このブログで公開していきたいと思います
このパッシブデザイン談義の最新の内容をご覧になりたい方は 是非資料請求をお願いします
さて第1回の今回は「パッシブデザインとは」というテーマでお届けします
パッシブデザインの定義として私の師匠の野池氏が定義している内容は次の通りです
「建物の在り方に工夫して
建物の周りにある自然エネルギー
太陽、風、地熱 などを最大限に活用し調節しながら
省エネルギーに寄与しようとする
建築設計の考え方とその実際的手法」
これが定義ですが、私なりにはお客様に次のように説明しています
「UA値というのが国の定める省エネ基準の断熱性能ですが、
この愛知県の6地域と呼ばれる地域であれば、 国の省エネ基準における断熱基準でいうと UA値は0.87W/㎡kという基準になるのですが
あえて、1地域と呼ばれる北海道レベルの0.46W/㎡k以下という断熱性能にしています
そうした上で
南の窓を大きく取り、大きくというのはLDKの床面積の20%以上を南の窓にして
冬の晴れた日の太陽熱を室内に取り込んで暖かくし
逆に夏の為に、その南の窓から太陽熱が室内に入らないように
ルーバーやシェードや庇などで 太陽熱が室内に入らないようにして室内を涼しくする
冬の為には庇は短く 夏の為には庇は長いほうが良いのですが
長すぎず 短すぎないように
周囲の建物も考慮しながら 名古屋が一番寒い日にいかに室内に太陽熱が入るかを日照シミュレーションを行います
南の壁の位置 つまり窓の位置がどこにあれば一番最適かを見極めるのが重要です
このように、日照シミュレーションを行いながら
設計や計算を繰り返し行う設計手法がパッシブデザインです
上の計算結果は実際に当社で設計した物件の計算結果です
実は、UA値も大事なのですが それ以上に大事なのがQ値です
UA値は 壁 床又は基礎 屋根又は天井 窓 の4つの部位からの熱ロスを外皮面積(4つの部位の面積の合計)で割った数字になります
一方Q値はその4つの部位に 換気(換気扇+漏気)からの熱ロスを足した
5つの部位からの熱ロスを 床面積で割ったものになります
UA値とQ値では換気からによる熱ロスが入っていない
という問題に加えて 凸凹問題というのがあり
四角形の建物であれば正確に熱ロスが出ますが
中庭タイプのものですと UA値は高性能であるかのように数値が出てしまいます
ということで しっかりとパッシブデザインをやっているものからすると実はQ値をしっかりと計算しながらお客様に提出しています
とは言え、「なかなか一般のお客様にそこまで言っても・・・」
という内容ですので そこまでは説明しないのですが
パッシブデザインの設計者としての誇りとして しっかりと計算してその数値を見ています
さんざん 断熱性能や日照シミュレーションのお話をしましたが
最終的には 快適な室温を 小さなエネルギーで実現することが重要です
快適な室温や小さなエネルギーを実現するためには
先程お見せした計算結果の ηACとηAHがとても重要なのです
これは、一般の省エネ住宅の設計者はもちろん パッシブデザインの設計者でも理解していない 若しくは 適当にやっている設計者がほとんどです
当社では
ηAC(夏どの位室内に太陽熱が入るかなので小さい方がいい)は1以下
ηAH(冬室内にどのくらい太陽熱が入るかなので大きいほうがいい)は2.5以上
という基準があります
この2つの数字をしっかりと計算することが 実は省エネルギーな住宅を作ることになると 一般のお客様は知らないでしょうし
困ったことに 設計士であっても知らない方がほとんどなのです
下の図は一般的な省エネ住宅とパッシブハウスとの比較(MJというエネルギーの単位にて比較)
次に、当社パッシブハウスと超高断熱住宅との比較(GJというエネルギーの単位にて比較)
当然 狭小地などではこの通りに行かない場合もありますが
その際は断熱性能の基準 0.46W/㎡kを上げるなどの基準があります
その他 色々な設計基準がありますが
最終的な目標は室温です
住宅の本当の性能は 自然室温と言って 無暖房状態 無冷房状態で
室温がどう変化するかを見るのが 本当の性能比較になると言われています
冬は深夜0時に室温20℃の状態でエアコンを切ってその後室温がどう変化するか?
夏は深夜0時に28℃の状態でエアコンを切ってその後室温がどう変化するかを見ます
当社では
冬は晴れた日であれば 朝6時に15℃以上 太陽熱が出てきたら無暖房状態で最高20℃以上になるように シミュレーションしています
ちなみに 古い住宅やアパートであれば 朝6時は5℃から7℃程度
一般的な省エネ住宅ですと 10℃から12℃程度です
一方、夏は無冷房で最高でも35℃以下になるようにシミュレーションする
35℃というと暑いと思われるでしょうが 無冷房状態ですと
一般的な住宅ですと40℃以上 45℃前後になってしまいます
この話をご説明するのはなかなか難しいですが・・・
冬の室温について もう少し詳しくご説明すると
太陽の出ていない朝方までの室温は 断熱性能(UA値やQ値)で決まります
そして、太陽が出てきたらその太陽熱で室温が上昇するので ηAHが大きいことが重要になります
一方夏の室温については ηACが小さいことが重要になります
冬のηAHは大きければいいのですが
ここでもう一つ落とし穴があります
この計算は国の基準によって行うのですが
実は 周囲の建物からの日影の影響を考慮していません
住宅は同じ建物であったとしても 周囲の建物によってその住宅性能が変わってしまうのです
ですから パッシブデザインにおいて 同じ建物というのはあり得ない
パッシブデザインにおいては 商品住宅 規格住宅というのはあり得ないのです
という事で ηAHが2.5以上である事 かつ その際に
その南の窓に太陽熱が できれば5時間以上 最低でも4時間以上
100%の面積に太陽熱があたっているように 日照シミュレーションすることが重要です
私どもがやっているのは 太陽熱の利用と調節をした自立循環型住宅というパッシブデザインの手法です
一方、南の窓を小さくして 超高断熱にして室内を暖かくするという 超高断熱型パッシブデザインもあります
南の窓やその他の窓も小さくして 断熱性能を高めれば超高断熱になりますが
私はそんな住宅は作りたくない・・・
窓がないので朝方までは暖かいかもしれませんが 昼間庭を感じたい時間帯に外との繋がりがプランにより実現できませんし
開放感もありませんし
光の量も少なくなってしまいます
ただの高断熱住宅ほどつまらない住宅はない・・・
光と熱は違います
この両方をしっかりとバランスよく設計することが重要ですし
省エネのデザインだけでなく
「美しく安心で快適で省エネな暮らしをこの街に」という私どものテーマも実現することが重要だと思っています
ちょっと今回は 細かい内容まで書き過ぎました
一般のお客様向けなのですが プロの設計者にとっては目からウロコの内容になったかと思います
今現在ウイルスの脅威にさらされています
今回のコロナウイルスは暑くなっても猛威を振るいそうですが
暖かい住宅は 健康改善するというお話をしましたが
ウイルス感染も防ぎやすいと言われています
そんな思いで 日本中の設計者がこのパッシブデザインに取り組み
沢山のお客様が 快適な室温で健康的に 小さなエネルギーで過ごせる
暮らしやすい住宅に住んでいただけますように
そう思い今日のブログを書いてみました
今後も このパッシブデザイン談義はかなり細かい内容を書いていきます
お楽しみに!
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