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住宅の蓄熱利用による室温の安定と省エネについて③ 「蓄熱の効果・実測」

 

蓄熱が実際にどのくらいの効果があるのかは、実際的にはよくわからないというのが本音です。

ですが、効果があるか無いかで言えば、間違いなくあるでしょう。

 

蓄熱には、

「顕熱蓄熱」というコンクリートなどによる蓄熱と、

「潜熱蓄熱」というPCMと呼ばれる材料で蓄熱する方法があります。

 

「顕熱蓄熱」は、温度や熱の移動時間のコントロールが非常に難しく、「潜熱蓄熱」は温度設定がしやすいのですが、

まだまだ開発途上なところがあり、一般的ではありませんので、私は「顕熱蓄熱」を行っています。

 

私は、現在木造住宅8割、RC住宅が2割程度の割合で設計しています。

木造の場合には、木造住宅の中に RC壁やコンクリート土間を設けて、蓄熱を行っています。

 

 

今回は、RC住宅の実際に建てられた住宅での「シミュレーションと実測」をお見せします。

こんな外観のお宅です。

 

 

外断熱が70mm、室内側に123mmの断熱材が入っています。

プランは、こちら。

 

 

1階は、貸しガレージとお仕事部屋。

2階は、LDKと寝室と子供室と水回りと中庭。

 

 

3階は、日射取得用の階段吹抜けと 畳コーナー となっています。

 

名古屋注文住宅のホテルライクなリビング

 

1階エントランス 階段から、 2階LDKと廊下、 3階 階段の吹抜けが繋がっており、

2階LDKのエアコンを効かせる 主たる居室は、 120㎡と通常の住宅程度の大きさがあります。

 

こちらが1階の蓄熱空間。 壁と階段がコンクリート。

 

 

こちらが2階階段ホールと廊下の蓄熱空間。

 

 

外気に接する壁は、しっかりと断熱をし、間仕切り壁を コンクリート壁にして蓄熱をさせています。

 

省エネ性能は、下記の通り。

 

UA値0.33と断熱等級7にはいっていませんが、ほぼ7に近く。

Q値(換気と漏気を加味)は、1.03 となっています。

 

 

そして、今回のお題の蓄熱性能ですが、

 

 

 

LDKの延べ床面積だけで計算していますが、182kJ/㎡Kと、

LDKだけで見れば、国の蓄熱利用の基準を上回っています。

 

これが 事前の一次消費エネルギーの算定です。

エアコンが国の設定温度と消費エネルギーになっており、さらに運転時間が異なるので 参考になりませんが、

こんな感じ。

 

 

そして、実際に消費されたエネルギーはこちら。

 

 

暖房は、連続運転に近い状態ながら、基準値ははるか少なく、設計値も少なくすんでいます。

しかしながら、冷房は基準値は上回っていますが、設計値の2倍強使われています。

ついでに、実は消費エネルギーの多い給湯は、設計値より少なくてすんでいます。

 

回路測定の都合上、照明とその他を合わせて実測していますが、

ここが実に多い・・・。

これは、貸し駐車場の電気代と、お仕事のパソコンが沢山動いている為です。

 

仮に、照明とその他が 設計値の値だとすると31,864MJで、実測値は74486MJなので、

その差の42,622MJを、実測合計125,413MJから引いた 82,791MJが、

貸しガレージや沢山のパソコンのない一般住宅との比較で妥当だと思います。

 

吹抜けを含む延床面積が334.9㎡の住宅なので、247.2MJ/㎡ とかなりの省エネ性能の住宅と言えます。

 

とは言え、その他の実際の消費エネルギーを含んだ年間消費エネルギーはこちら。

仮に1kWhあたり30円で計算すると、年間の合計が385,499円となりますが、

先ほどの貸しガレージやパソコンを除けば、254,480円程度の年間光熱費。

全館的な連続運転の住宅で、この大きなお宅と考えれば、かなり少ない消費エネルギーでしょう。

 

次に、室温を見てみます。

まずは、夏から。

 

 

LDKの設定温度は、冷房は20℃設定とかなり低く設定しています。

夜中は、つけている日とそうでない日があるようです。

外気温が下がる夜に、8月は25℃台のようで、LDK空間の蓄熱が効いていると思われます。

日中も200W平均使っていません。 気になるのは、9月の方が 消費エネルギーが多い事・・・。

平均室温が1℃高いので、ひょっとしたら、遮蔽をされずに 陽だまりが室内にできているかもしれません。

さらなるヒアリングが必要です。

 

 

寝室は、扉を開けて、脱衣・洗面・F-CLなどと一体空間で冷房を使用しているとの事。

設定温度は、22℃か23℃で、一日中つけているとの事。 それで、室温は25℃程度。

ただ、この消費エネルギーが多い・・・。 8月は、時間あたり300W。

かなり涼しい状態で過ごされていますが、消費エネルギーは多いですね・・・。

こちらは蓄熱がほぼ無いのも影響しているのか? さらなる解析が必要です。

 

こちらは、洗面の室温。

扉を開けるだけの 全館空調的な冷房で、室温が27℃平均。

 

全館空調的な冷房が、消費エネルギーを増やしているようです。

エアコンのない洗面で、27℃は確かに涼しいでしょう。

1日の室温変化は、7月から9月で0.3℃未満。 蓄熱が室温安定に寄与しています。

 

 

さて、次に冬を見てみます。

 

LDKは、21℃程度で過ごされています。

しかしながら、何と! 1月で時間平均 154W !!!!

夏の消費エネルギーより、少ない!

これは、パッシブデザインの設計だけでなく、蓄熱の利用がとても上手くいっているのではないかと思います。

こんな数字は、通常の蓄熱のない住宅ではありえません。

 

 

次が寝室です。

やはり、21℃。 200W前後程度で過ごされています。

(2月は低いですが、暖房エネルギーが少ないので、留守の日が多く下げているかと。)

これもかなり少ないです!!!

 

この住宅のオーナー様、非常に理解が深く、

しっかりと連続運転をしてくれています。

住宅の大きさや、性能にもよって変わりますが、

蓄熱利用のある家は、ある程度連続運転して、熱の収支は、エアコンのサーモスタットに任せた方が、

省エネになるようです。

 

ついでに、洗面の実測も。

 

全館連続暖房的に使われているので、

LDKと寝室の暖房と蓄熱により、21℃くらいの室温が安定的に変化しています。

1月も2月も室温変化が0.2℃以内!!!!

やはり、蓄熱は室温安定に繋がりますね!

 

設定温度と住まう方の体感温度差により異なりますが、

パッシブデザイン(南窓を主たる居室の床面積の20%程度設ける)での蓄熱は、

室温安定は、夏も冬も大いにあり。

省エネに関しては、冬の方が、より効果があるようです。

 

実測公開 どんどんしていきます!

 

 

 

 

 

 

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