冷房負荷の削減について の3回目ですが、
今回は、太陽熱を遮る「日射遮蔽」の種類や手法について、書いてみます。
1回目にも書きましたが、
「太陽熱は外で遮る」 が大鉄則です。
まずは、シェードでやる方法。
すだれでも良いですが、サッシメーカーが窓と一体としているものが安価で良いでしょう。
2000×2000の引き違い窓につけるのに、3万円~4万円程度です。
真っすぐ下に降ろしても良いですし、デッキ床の先端にフックをつけて斜めにしても良いです。
斜めに設置し、圧迫感を無くしたり、風を通したりする場合もあります。
軒先に取り付けて垂直におろして、テラスなどを利用できるようにする場合もあります。
普段は、屋外家具などを置いておく事が可能になります。
南窓の前に壁を設けて、水平に設置する場合もあります。
これにより、LDKの外でお子さんをプールなどで遊ばせても、
外部からも安心でき、且つ 夏の日差しを遮り、涼しい状態で遊ばせることができます。
但し、このやり方をする場合には、南窓に壁の日影を作ります。
パッシブデザインでは、床面積の20%程度の南窓も設けて、冬の日射取得をしないといけません。
この写真の住宅も床から1mは太陽熱が入らないので、横長に窓を設けて日射熱を最大化しています。
綿密な日照シミュレーションと太陽熱が当たる面積の計算が必要になります。
私どもでは、1時間ごとにどのように日照が当たるかを確認し、南の窓面積を調整しています。
夏の事を考えると、南の窓が多ければいいというものでもありません。
さて、夏に話を戻します。
次に、私が考案した 製作によるルーバーです。
私の自宅でもやっています。
Rの壁の場合は、縦でやっています。
水平の壁の場合には、横でやっています。
横の方が、より冬の日射取得がしやすいのですが、R壁の場合には横のルーバーは無理ですので・・・。
こちらの「ビルトインガレージのあるR壁の家」もそうです。
横のルーバーで、私が好きな家は こちら。
1階も2階もルーバーです。
ルーバーは、日射遮蔽という面と プライバシーの保護という面があります。
狭小地や道路に面している住宅などでは、有効になります。
こちらのお宅は、狭小地に建っています。
尚且つ、ルーバーは色を微妙に変えて、外観のアクセントをつけていますが、
おわかりいただけますでしょうか・・・。
南側は、今は空いていますが いずれ住宅が建つでしょう。
その時の事を考えて、2階3階は全面ルーバー、1階は先に出したシェードにしています。
このルーバーは目隠しをしながら、夏は日射を遮蔽、冬は日射を取得できる角度に調整します。
中間期も日射遮蔽でしょうが、夏と冬で衣替えをして頂いています。
このお宅では、1階の寝室上部にトップライトを設けて、冬はこのトップライトから日射の取得を行っています。
外観のデザインを変えずに、プライバシーに配慮しながら、夏と冬のバランスを取れるのがこのルーバーの特徴です。
また、パッシブデザインを行うと、1階の南窓に日射があたらないときは吹抜けを設け、
2階にも大きな南窓を設ける場合があります。
そうなると、南面が窓だらけで、微妙な外観になる場合があります。
ですので、外観のデザインを整える為にも、このルーバーを活用する事が多いのです。
ネックは、若干圧迫感を覚える事でしょう。
ただ、バルコニーなどを広めにとり、その外にルーバーを設けると、
LDKの広がりを感じれ、LDKが畳数以上の広さを感じれます。
次に、電動可動ルーバーで日射遮蔽をする場合はこちら。
この物件の中庭上部についています。
オスモさんの「ヴァレーマ」です。
この位置であれば、外観から見える事はないので、外観デザイン上 そのまま取付けをしていますが、
もう一物件、こちらもです。
この住宅も 道路面には窓のない住宅。 南の日射取得と東西の採光と通風によるデザインです。
その南面は大きな窓です。 冬のLDKは、ほとんど暖房をつけていません。
夏もLDKは40畳に40畳の吹抜けですが、冷房はとても消費エネルギーが少ない。
こちらの電動可動ルーバーは、枠は見えていますが、白色の外壁に同化しているので目立ちません。
道路面などからよく見えてしまう場合には、取付方法も考え、デザイン的にも考えながら取付をしています。
わかりにくいかもしれませんが、
南壁の外に2重に梁を設けて、その内側に電動ルーバーを設置し、枠の存在感を消しています。
ついでにですが、内側のハニカムブラインドも同様な 納まりにしています。
省エネにしながら、省エネ部材を如何にデザイン的にその存在感を無くすか、細部のディティールをどうしていくかが重要です。
次に、電動可動水平シェードです。
かなり高額になります・・・。
こちらは オスモさんが販売している「ヴァレーマ」のシェードバージョンです。
LIXILの彩風の方が金額的には抑えれます。
トータルなデザインバランスで、選択するべきかと思います。
また南の開放性を得ながら、南住宅からの視線をカットするのにも、この電動可動水平シェードは有効です。
次に、庇による日射遮蔽です。
私は、庇だけで日射遮蔽をすることはありません。
あくまで、第一優先は、シェードやルーバーです。
何故かは、第1回でお話をしたように、中間期に太陽高度が下がっても外気温が高い場合に困るからです。
実際には日射量です。
以下は、国の日射量のデータベースです。
南の窓を想定すると、まずパッシブデザインにおいて、南窓を優先するかがわかります。
冬の南窓には、4kWh/㎡の日射があたります。
そして 夏は約半分になります。 ただし、外気温が高いので、当然日射遮蔽は必要です。
注目すべきは、春と秋です。 3kWh/㎡ 前後の日射があたっています。
春と秋は、外気温も高い日がある上、南窓の日射量も多いのです。
こんな話をすると、南窓は少ない方がいいと思われるかもしれませんが、
それは、シミュレーションやエアコンの実働COPから考えても、そうではありませんのであしからず。
話を戻します。
という事で庇だけでは、日射遮蔽はできません!
なので、ルーバーやシェードはこれからの日本の家には、絶対必要なのです。
また道をそれますが、
「それなら 太陽光発電や蓄電池をつけてルーバーやシェードをつけたらパッシブデザインをやらなくてもいいのでは?」
「パッシブデザインって 日射遮蔽などの物をつけたら それでいいの? 物の話?」
というご質問を受けた事があります。
セミナーを受けていない方からの質問でしたが、
そうではありません。
あくまで冬を考えて、冬の日射熱を入れる設計が大前提になります。
そうしないと 冬の暖房負荷は減りません。
話を戻します。
という事で、庇を設けても 春と秋の中間期を考え、必ずシェードは必要なのです。
このお宅は、南西に方位が振っている為に、南東と南西に深い軒を設けるだけでなく、
軒の先端にシェードを設けています。
軒や庇が深くなればなるほど、横に長い窓にして、上部からの日射熱で必要日射量を確保しないといけません。
先に挙げたこのお宅も同じです。
軒庇だけでなく、シェードとルーバーは必須です。
こちらの住宅は、2階LDKでバルコーの壁を斜めにすることにより、冬の日射取得をしています。
南のルーバーはデザインだけです。 可動しません。
ですので、窓外の写真はないですが、ルーバーが設置されています。
こちらの物件は、庇とサイド袖壁とシェードによる日射遮蔽をしています。
再度の壁や南の壁は斜めにすることにより、冬の日射を確保しています。
ガルバニウムの外壁とシェードが調和して、違和感はないですが、庇とシェードを併用しています。
冬の為に高窓を設けたので、暑い中間期と夏は、ご主人様に脚立でシェードを下して頂く必要があります・・・。
窓の外に手動のシェードやルーバー、窓内はハニカムブラインドを設けて、
付属部材(シェード・ルーバー・ハニカムを指します)の調整を行うのであれば、
脚立などでできる場合を除き、バルコニーやキャットウォークを設けないといけません。
プランニングも変わってくるのです。
事前にそのあたりも想定した家づくりが重要です。
次回も お楽しみに!
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