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断熱性能、省エネと意匠の両立

コンクリート壁の蓄熱性を利用したリビングデザイン

 

 

パッシブデザインの断熱、省エネについてお話をします。

 

 

まずは、断熱性能をどのあたりにするか?

HEAT20の資料を参考にします。

 

住宅の断熱性能についての資料

 

断熱性能についての資料

 

パッシブデザインと呼ぶなら、最低でもG1以上、私はG2以上にしたいと考えています。

超高断熱とするのなら、G3以上の断熱性能が欲しいところです。

 

次に断熱性能だけで考えるのではなく省エネ性能からも見てみます。

 

私が良く設計するUA値0.4W/㎡K前後の物件。

これを国のエネルギー消費性能計算プログラムに入力すると

 

 

上記のようなエネルギー消費量の計算結果になります。

暖房で56%削減、冷房で42%削減されています。

ただ、ここでちゃんと見なくてはいけないのがηACとηAHです。

この数字がエネルギー消費量に影響するという事を、専門家であってもよく理解されていない方が多いです。

 

 

設備機器が同じ住宅であれば、より省エネにする為にはUA値の数字を小さく、ηAC値を小さく、ηAH値を大きくし

それらのバランスを如何にとるかが重要なポイントとなります。

なにも断熱性能だけが重要なわけではありません。

 

私が設計するなら、このバランスをとった自立循環型のパッシブデザインで行います。

 

次の表は、そのバランスを比較してみたものです。

 

 

UA値の断熱性能だけが、一次エネルギー削減のすべてではないことが分かります。

では、このバランスをどう取ると良いのでしょう。

 

冬の為に

・南にはLDKやそこにつながる空間の床面積の20%以上の窓を作る。

・南間口が狭い土地の場合は吹抜けを作り、上階の窓から太陽熱を入れる。

 

夏の為に

・南の窓には庇またはシェードやルーバー、簾などの外付け付属部材を採用する

よく庇があれば大丈夫という方もいますが、庇では長さにもよりますが50%から60%程度しか日射を妨げることが出来ません。

一方シェードやルーバー、簾は15%前後の日射を防ぐことが出来ます。

そこも理解した上で設計していないといけません。

 

こうしたバランスを重視していない高断熱住宅は、コストの事もあり、南の窓が小さいことが多いです。

そして付属部材や庇をつけず、サッシの性能だけに頼りすぎていることも…。

いろんな組み合わせ方があり、やり方は様々ですが、わたしはやりたくない…。

なぜなら意匠設計と省エネ設計をバランスよく行うこともとても大切だと考えているからです。

もちろん、構造設計も。

 

私は、窓の断熱性能はアルミと樹脂の複合サッシ(U値1.7W/㎡K程度)にして、

特に南面には大きな窓で庭と繋がり、景色も見やすいようにクリアガラスを採用します。

ただ、東西北面の窓で借景したい場合には困ったりします。

 

結局はさらに高い断熱性能にしないと難しい場合もありますが、それはその都度設計者が考えればよいこと。

私はUA値の最低の社内基準は設けるものの、それはある程度設計の自由度を高めるためにも

ギリギリではなく、少し良い数字にしておくことが重要だと思います。

そうしないと窮屈な設計になってしまいますよね。

 

ある程度の省エネ住宅の設計ができるようになったら、次はそれを意匠設計とどう組み合わせるかを考えるべきだと思います。

好みではありますが、正直見た目のデザインが良くない省エネ住宅も多い…。

 

 

また、ある程度の断熱性能や日射コントロールを行っていれば、さほど暖冷房のエネルギー消費量に差は出てきません。

 

 

 

 

それよりも、注目するべきは給湯器でしょう。

暖冷房エネルギーの合計よりも、給湯エネルギーの方が多かったりします。

これを如何に小さくするかを考え、機器の選定を行うべきです。

断熱性能を上げるよりも、安く省エネが実現できるかもしれません。

しっかりと検討することが必要です。

 

それから、全館連続暖冷房についてもお話をしておきます。

全館連続暖冷房は確かに快適です。

どんな部屋にいても、暖かく涼しい。

ただ断熱性能を高めて、日射のコントロールをしっかりと行っている住宅にとってそれが必要かというと、私には微妙です。

洗面所などでも、ほぼ15℃以上で過ごせるような家に、全館連続暖冷房は必要なのでしょうか。

 

特に超高断熱住宅に、この全館連続暖冷房を採用する場合が多いように感じますが、快適ではありますがエネルギー消費量はその分増える方向へ向かいます。

せっかく断熱性能を上げて省エネにしたのに何かもったいない…。

 

特に冬は昼間の日射を利用する設計なら暖房は消してもいい。

そんなことを念頭に置いて省エネ設計を考えると、私は断熱はほどほど、とは言えG2を超える断熱性能で設計の自由度を確保しつつ、

夏の日射を遮るために必ず外付けの付属部材をつけ(庇の有無はデザイン的な観点で決めます)、冬は太陽熱で室温を上げられるように南の窓を大きく取る、というバランスの良い設計が必要だと思います。

そのためには周囲の建物や自身の建物から、南の窓が日影の影響を受けないように「日照シュミレーション」をすることが重要です。

 

※敷地の日照シュミレーション

日照シュミレーションのイメージ資料

 

※建物を設計してからの日照シュミレーション

日照シュミレーションのイメージ資料

 

 

このように、両方をしっかりと行う日照シュミレーションがとても重要です。

さらに蓄熱性能を活かした設計もこれからもっと注目されると思います。

 

以前、再エネタスクフォースで東京大学の前先生もお話されていました。

 

いかにこの蓄熱をデザインしていくかが、意匠と省エネの複合になって、価値のあるものになってゆくと思います。

 

以下はPASSIVE DESIGN COME HOMEの設計事例ですが、

 

木造住宅にコンクリート階段

 

コンクリートブロック壁をモルタル塗りにした壁に間接照明

 

書斎の机の下にもコンクリートブロックを

 

 

これって省エネを設計の力(デザイン)で実現するという事なんです。

考えると楽しいものです。

 

断熱性能だけをただ追求するのではなく、設計者として省エネ社会の実現に寄与するためには意匠と省エネ、もちろん耐震もバランスよく考えることが重要だと思います。

 

それが設計者としての誇りと楽しみだと思います。

 

 

 

 

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